「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる。」をパーパスに掲げる株式会社ユーザベース。すべてのビジネスパーソンが有益な経済情報にアクセスできる情報インフラになることを目指して、経済情報プラットフォーム「スピーダ」、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」を展開しています。
2023年4月に創業15周年を迎えたユーザベースは、M&Aや新規事業の創出を重ねて高成長を続けてきました。
今回、株式会社リブルでは「Slack Bolt」を使用した統合マスタ管理アプリケーション開発を担当させていただきました。
多彩なチーム、多彩なメンバーが活躍するユーザベースを裏で支えるべくして発足したアプリ開発プロジェクトの背景や今後の展望などについて詳しく伺いました。
メンバー紹介
株式会社ユーザベース IT Strategy Division
武藤 崇志(むとう たかゆき) 様
コニカミノルタにてITを活用した業務改革、新規事業企画に従事した後、ユーザベースに参画。販売管理、マスタ管理、購買管理等の社内業務改革プロジェクト及び、社内で利用するSaaS利活用推進に従事。
株式会社ユーザベース IT Strategy Division
秋本 裕史(あきもと ひろふみ)様
インターネットサービスの事業会社にて、Salesforce Adminに従事したのち、2022年5月に株式会社ユーザベースに入社。ユーザベースグループ全体のBPRを担当するチームにて主にスピーダ事業の営業管理・販売管理領域およびコーポレート領域のシステム管理等を担当。
株式会社リブル/代表取締役
上田真理子(うえだ まりこ)
東証一部上場 パーソルHDグループのパーソルプロセスアンドテクノロジーにて大企業向けのSalesforce導入・開発・保守運用に従事。とあるプロジェクトで何千万というコストをかけてSalesforceを導入したが、現場では一切使われなかった経験があり、より現場の業務改善に携わりたいという想いで独立。現在はBtoB SaaSを始めとしてBtoB系スタートアップ・中小企業を中心にご支援を行っている。
上田:改めて、現在のご担当業務についてお教えいただけますでしょうか。
武藤:現在、2つの部署にまたがってSaaS全般の管理をしています。
1つ目は、最近組織変更した「SaaS DevOps」の部署という、社内のSaaS全般を管理しているチームに属しています。その中でSalesforceなどの管理をしています。
2つ目は、組織変更前の旧BPR部門で引き続きITマネジメントチームにも属しております。そこでは、プロジェクトとして新しいSalesforceを作るなどを行っています。
どちらのチームでもシステムとしてSalesforceが登場します。
上田:ありがとうございます。SalesforceとかRPAとかが登場するチームですよね。
武藤:そうです。社内のSaaS全般が対象なので、結構幅広いツールに携わっております。会計システムのNetSuiteやAnaplan、Slack、Google Workspace、okta、zoomなど、社内で使われているありとあらゆるSaaS製品を我々のチームで管理しています。
上田:情シスは情シスで別部署として存在しているのでしょうか?
武藤:ありますが、ITマネジメントチームの傘下に入っているので同じチームです。AWSなどの社内インフラや、パソコンのキッティング作業などを担っており、情シス機能の一部分と、BPRでの業務改革的なシステム担当の一部分の合わさった部分ですね。
上田:なるほど、幅広く担っているのですね。話は変わりますが、Salesforceと連携するSlackアプリの構築を今回弊社でご支援させていただきましたね。その開発の背景や期待値などを改めてお聞かせいただけますでしょうか。
秋本:もともとはHeroku上で動くwebアプリケーションがあり、そのwebアプリケーションの改修としてリブルさんに依頼をさせていただきました。
そのシステムではグループ企業をまたいだ統合取引先マスタへの登録や、支払先情報の登録作業などをしているのですが、メンバーが日々運用していくには入力の手間や、メンテナンス部分でも課題がありました。
弊社ではSlackが日常業務の中心として存在しているので、社内の誰もが慣れているSlackを中心としたシステムに寄せていくのが良いのではと考えました。
Slackで入力したら、システム側にも反映されるというようなものですね。
上田:たしかに、日々使い慣れているもののほうが実際に使うユーザー目線でも運用のハードルは低くなりますからね。元々社内申請系はSlackのワークフローを使っていたのでしょうか。
武藤:そうです。社内でも以前からSlackアプリを活用していく流れがありましたが、その前からSalesforceを使った業務周りについてはSlackに集約していく構想がありました。それぞれの業務で必ずしもフィットするか、なにをSlackに集約していくか、などの考慮事項はありますが、やはり弊社で働くすべての社員の業務はSlackを起点として業務が回っているので、「Slackですべての業務が完結する」という世界観を作っていきたいという思いがおそらく根底にあったと思います。
その一環で今回グループ企業をまたいだ統合取引先マスタや、支払先情報の登録・変更申請および承認作業を行うための「統合取引先マスタ管理や修正」も今回のSlackアプリで実現できたらと思って依頼しました。
上田:当時の話として、以前に使用していたHerokuでのwebアプリのメンテナンスの難しさもあったのかなと思っていますが、そこはいかがでしょう。
武藤:たしかに複雑なアプリケーションでしたので、なにか項目を追加したり変更したいと思っても、社内だけだとどのようにメンテナンスをしたらいいか分からず、他の部署やメンバーにも引き継ぎが難しいのも課題でしたね。
MuleSoft Composerを導入したというのもあるのですが、環境の変化に伴う「メンテナンス面での最適化」と、それに伴うメンバーが日々の業務を行う上での「UIの最適化」の2点を考えた時に、今後のことも考えると「Slackを入力の起点にしたシステム」のほうが良いのではないだろうか、という解に至りました。
上田:MuleSoft Composerを導入したことも今回の改修のきっかけの1つだったと認識していますが、もう少し詳しく伺ってよろしいでしょうか。
武藤:以前はグループ企業間のSalesforce連携をHeroku上のバッチ処理で行っていましたが、MuleSoft Composerを導入してグループ企業間のSalesforce間の連携をより効率的に、より早く開発していくことを進めていこうと考えていました。しかし、MuleSoft Composerにワークフローを寄せるにあたって、他はMuleSoft Composerなのに、ここだけはHerokuが残っている、といったいったいびつな構造になってシステムアーキテクチャ全体のデザイン自体が複雑になるのではと考えたのが改修のきっかけですね。
なので、システム間連携の最適化を考えるとHerokuではなくすべてMuleSoft Composerに置き換える必要がある。その過程で、Herokuの中にも連携バッチ部分とアプリケーション部分が出てくる。
そのアプリケーション部分について、当初は置き換え先としてAWSも入れてHerokuでのwebアプリを残すべきか、なども検討していたのですが、社内業務としての「将来を見据えたあるべき姿」も鑑みた時に、Heroku上のWebアプリではなくSlackに寄せていきたい、という結論に至りました。
上田:MuleSoft Composerを導入してみて、快適になりましたでしょうか。
武藤:やばいです(笑)。使い勝手良すぎてもう離れられないですね。といいつつも、さらに新しくData Cloudの導入も検討していますけどね。
上田:すごい、どんどん新しくアップデートされていきますね!
武藤:ただData Cloudを導入して課題の解決ができそうかを検証したいので、もうちょっと様子見をしています。
取引先連携はMuleSoft Composer、データクレンジングしたあとのリードとか取引先責任者はData Cloudといったことを考えています。
いまはMuleSoft Composerが大好きですが、今後もシステム面や業務面の最適化のために新しい製品があれば検証した上で取り入れることを検討していきたいです。
上田:改めて、弊社を今回の開発パートナーとして選んでいただいた理由についてお教えいただけますでしょうか。
武藤:元々からリブルさんを含む複数社でのマルチベンダー体制でSalesforce周りの構築をしていました。今回のパートナー選定をする際に、弊社のビジネスも鑑みた上での「仕様が決まりきっていない状態から、ある程度の形に仕上げてくれるのはリブルさんしか居ないのでは」という話になりました。それで、リブルさんで行こう!という決断になりました。
上田:そうだったんですね、ありがとうございます。
武藤:要件定義する上でも、弊社側でもHerokuの仕様などを理解しないとならないですが、その時間すら捻出が難しいので、リブルさんであれば仕様を理解した上で、さらに我々の実現したい要件を汲み取っていただいて形にし、そしてブラッシュアップまでをするサイクルを回してしていただける。リブルさんにお願いする最大のメリットだと思っています。
なので、今回のSlackアプリ開発のプロジェクトにおいてもそれが出来たのが良かったですね。
上田:ありがとうございます。大変嬉しいです!弊社としても「まずはある程度作って、実際に触っていただいてお客様とブラッシュアップしていく」ことを重要視しているので嬉しい限りです。
武藤:アジャイルですよね。まさにその通りで、完成してからイメージと違うよりも、途中経過がわかるので大変ありがたいです。
上田:ありがとうございます。その一方で、今回のプロジェクトにおいて弊社に「これまでにない新しい製品」を依頼するのは抵抗なかったでしょうか。苦労された点などもあればお聞かせいただきたいです。
武藤:そうですね。Slack Boltの仕様・製品理解の部分ですかね。
Slack Boltの仕様としてどこまで何ができるかの限界値が我々も分からないのと、
あとは、Slack Boltの仕様としてかゆいところに手が届かないというか、「戻るボタン」がデフォルトでないので作り込みをしないといけないなどの、製品特有の理解ですね。
頑張って製品理解をする努力をしていたつもりですが、しかしまだまだ足りない部分があったので、「できると思っていたことが実はできない」などのそのあたりは苦労しましたね。
上田:選択リストの端っこまで表示できないとか、フッターに戻るボタンを表示できないとか、ありましたよね。
武藤:そう、あれダサいんですよね(笑)
上田:そうですよね。そういった部分なども、実現したいこと、仕様でできること、改修してできることを鑑みて少しずつすり合わせて完成に仕上げていきましたね。
現状、運用されている中で困った点などはないでしょうか。
武藤:現状ほぼ問題ないですね。サーバーを縮小した影響でユーザの利用タイミングがかぶると負荷かかるので止まることがあり、サーバー増強を予定していますが、挙動部分については問題なく使えています。
上田:よかったです。今回のプロジェクトを通じて良かった点などあればお聞かせいただきたいです。
武藤:Slackにシステムを寄せることができた、というのはすごく良かったですね。
今は取引先管理はSalesforeをメインで管理していますが、Salesforceとは別のシステムで購買管理をしています。その購買管理でもSlackを起点に取引先情報や支払情報入力ができています。
Slackアプリに寄せられたことによって、社内業務の全ての導線の起点となる「取引先管理」の仕組みが集約できるアーキテクチャを作れたということはとても良かったです。
今回のアプリケーションの構想が発足してから、社内で実運用開始するまでそんなに期間が無かったのですが、スピードよく一気に仕上げていただけたのも良かったです。
上田:購買管理の中で、押印申請の仕組みもSlackに載せる話がありましたよね。
武藤:そうですね。新規取引先などの押印申請のために新たなシステムを導入せずとも今回のSlackアプリに機能を載せることができそうです。
また、マスタ管理も現在は事業管理部門とか予算管理部門とかが管轄してますが、今後は経理での勘定項目のマスタなども統合していく動きを予定してます。
意図としては、Slackアプリに組み込んで勝手にマスタ変更がされないようにしていく。また、データテーブルを作ってSlack側にアプリケーションメニューを作っていけば管理項目を増やせるので、今後さらにいいアプリになっていくと思います。
上田:そうなんですね。今回のアプリについて、社内からの評判はいかがでしょう。
武藤:今回Slackアプリを入れたことで、これまで手動で行っていた取引先情報と法人番号との紐付けが自動化され、きれいな取引先情報が運用できるようになったこともあるので社内から評判いいですね。
なので、今回の開発によって「ストレスなく普通に運用できる幸せ」を感じています。
秋本:システム運用の観点では、データベースがSalesforceに統合できたのがよかったです。
従来のシステムだと、内部的にPostgre SQLも使用していたのですが、どこでエラーが出ているのかを確認するのに手間が発生していました。今はSalesforceに統合されたことでメンテナンスの手間が減ったのは助かりましたね。
上田:そうですよね。Postgre SQLのデータメンテナンスもされていましたよね。採番管理もSalesforceに寄せられたので二重採番もなくなりましたかね。
秋本:そうですね。その点ではまさにシステム運用も効率化できたので良かったです。
他にもユーザー追加についても、以前だとPostgre SQLにユーザ情報を追加したり、二重管理が発生していました。現在は別途ユーザ追加作業をしなくても、Slackにログインすれば今回のSlackアプリが使えるので、助かっていますね。
上田:今後のシステム課題や展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
武藤:大きくは2つです。1つ目は、対象のマスタを増やしていくこと。2つ目は、他の業務でも使いたいという話も出ているので、対象の業務を増やす、ということですね。
上田:Slackワークフローの中にSlackアプリの機能を取り入れられたらいいですよね。
武藤:そうですね。業務やシステムの最適化を考える上では、自社で運用ができるシステムのベースがあるのはとてもありがたいですね。
上田:今後、Salesforce以外のシステムとの連携もされる予定でしょうか?
武藤:いまのところは考えていないですね。一旦はSalesforceのマスタを経由してから他のシステムに連携するほうが、データがきれいになると思うので。
上田:ありがとうございます。
今回改めて色々とお話しを伺えてよかったです。本日はお忙しいところありがとうございました。